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こんにちは、レコード店の松田です。 今回は1960年代の年間レコード売り上げランキングをご紹介したいと思います。 現在ではオリコンランキングが当たり前のようにありますが、統計が開始されたのが1967年からであり、それ以前はランキングという概念がなく正確なデータが残っていないのが現状です。 なので今回は、1950年代から最新までの流行り・ランキング・歴史などを紹介するサイト「年代流行」に掲載されているランキングと、音楽雑誌ミュージック・ライフに1966年まで掲載されていた「東京で1番売れているレコード」を比較しながらご紹介したいと思います。 (※東京で1番売れているレコード・・・東京の約20店のレコード屋が毎月売れたと思うポップスのレコードに10点満点で得点をつけ、その集計を記したランキング。販売枚数によるランキングではないので正確性には欠けますが、現在では貴重な販売データとなっています。) 尚、手元に資料のある60年〜65年までを2回に分けてご紹介したいと思います。 参考資料 ・WEBサイト「年代流行」 https://nendai-ryuukou.com/1960/song.html ・書籍「ミュージック・ライフ 東京で1番売れていたレコード 1958〜1966」(監修・著)澤山博之、(出版)シンコーミュージック |
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●1960年● |
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【年代流行ランキング】 1位 ズンドコ節/小林旭 2位 霧笛が俺を呼んでいる/赤木圭一郎 3位 誰よりも君を愛す/松尾和子・和田弘とマヒナスターズ |
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【東京で1番売れたレコード】 1位 僕は泣いちっち/守屋浩 2位 月影のナポリ/森山加代子 3位 悲しき六十才/ダニー飯田とパラダイス・キング |
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年代流行ランキング第1位は60年1月に発売された小林旭の「ズンドコ節」。45年頃から「海軍小唄」として、田端義夫、ザ・ドリフターズ、氷川きよしなど様々な歌手に歌い継がれ、どの世代にもお馴染みの1曲です。 第2位「霧笛が俺を呼んでいる」は50年代半ばから流行し量産されたマドロス歌謡(船乗り、港町をテーマに書かれた恋愛曲)。 3位「誰よりも君を愛す」は60年代に流行したムード歌謡の代表曲です。 東京で売れたレコード1位は、ロカビリー全盛期「3人ヒロシ」として一世を風靡した守屋浩による歌謡曲転向後の代表曲「僕は泣いちっち」。特徴的な歌詞とリズミカルな楽曲がマッチし印象に残る1曲です。 2位は、イタリアの歌手ミーナのカバーで、森山加代子1枚目のシングル「月影のナポリ」。デビュー曲から爆発的なヒットとなりました。 3位は、坂本九の初ヒット曲となった「悲しき六十才」。「Ya Mustafa」のタイトルで世界中で歌われるエジプト系コミックソングです。 |
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●1961年● |
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【年代流行ランキング】 1位 君恋し/フランク永井 2位 東京ドドンパ娘/渡辺マリ 3位 硝子のジョニー/アイ・ジョージ |
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【東京で1番売れたレコード】 1位 北上夜曲/多摩幸子・和田弘とマヒナスターズ 2位 東京ドドンパ娘/渡辺マリ 3位 上を向いて歩こう/坂本九 |
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年代流行第1位は「魅惑の低音」として人気を得たムード歌謡歌手フランク永井の「君恋し」。1922年に作曲され二村定一により歌われていた楽曲のリバイバルヒット作です。 両ランキングで2位に輝いたのは、渡辺マリの「東京ドドンパ娘」。ドドンパとはフィリピン起源のダンス・リズムを元にニュー・リズムとして流行させた日本の音楽ジャンルで、この曲のヒットによりドドンパのリズムの楽曲が多く発売されました。 3位はアイ・ジョージの自作曲「硝子のジョニー」。アイ・ジョージですが、なんとドドンパブームの立役者であり、このリズムに「ドドンパ」と名付けたのは彼だそうです。 東京で売れたレコード部門、第1位は「北上夜曲」。様々な歌手により競作で発売され中でも多摩幸子・和田弘とマヒナスターズ盤とダークダックス盤が人気でした。レコードは6社からリリース、さらに3社から映画化された人気曲で、50年代頃から流行した歌声喫茶の定番曲としても良く知られた1曲です。 3位は日本のみならず世界中から「SUKIYAKI」と呼ばれ愛された、坂本九を世界的歌手に押し上げた1曲「上を向いて歩こう」。 61年11月〜62年1月まで3ヶ月間1位を記録。4月までランクインを続け、1度ランキングから外れるも海外から評価された影響を受け63年6月に再浮上し、計15カ月ランクインしました。 現在の総売上は1300万枚を超えるといわれ、70ヶ国以上で発売されています。 |
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●1962年● |
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【年代流行ランキング】 1位 いつでも夢を/橋幸夫・吉永小百合 2位 琵琶湖周航の歌/ペギー葉山 3位 山男の歌/ダークダックス |
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【東京で1番売れたレコード】 1位 山男の歌/ダークダックス 2位 川は流れる/仲宗根美樹 3位 可愛いベビー/中尾ミエ |
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年代流行第1位は、橋幸夫と吉永小百合によるデュエット曲「いつでも夢を」。 発売1ヶ月で30万枚を記録する大ヒット曲で、明るく希望のある楽曲は高度経済成長期を象徴する1曲となりました。当時二人とも売れっ子歌手だったためスケジュールが合わず、別々にレコーディングしたものをミックスしレコード発売となりました。 2位のペギー葉山「琵琶湖周航の歌」は第三高等学校(現:京都大学)のボート部の学生により大正6年に作詩され、三高の寮歌・学生歌として歌い継がれた楽曲です。 年代流行第3位、そして東京で売れたレコード第1位となったのは「山男の歌」。オリジナル曲に加え、民謡、山の歌、唱歌などを得意とした男声コーラスグループ、ダークダックスの最大のヒット作。 今年の山の日(8/11)を前にB&G財団により採られたアンケート「山でうたう歌」では、童謡や人気アニメ曲を抑え第1位を獲得しており、長く愛されるている1曲ということがわかります。 東京で売れたレコード第2位の仲宗根美樹「川は流れる」は元々61年に発売された「雨の花園」のB面として収録された曲でした。歌声喫茶で人気に火が付いたことから、AB面入れ替えて再発され大ヒットとなりました。 3位はアメリカンポップスの女王コニー・フランシスのカバーで、中尾ミエのデビュー曲「可愛いベビー」。日本では中尾ミエの他、沢リリ子、森山加代子、コニー・フランシス本人による日本語カバーと多くの歌手が歌った大ヒット曲ですが、本国アメリカではシングルカットされておらず、日本独自のヒット曲です。 |
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今回は前半60年〜62年までをご紹介しました。 戦前から歌い継がれてきた曲や現在でも有名な曲など、どの曲も長く愛されていることを改めて実感しました。 坂本九やザ・ピーナッツが10位までのランキングに様々なタイトルで継続的にランクインし続けるというデータも興味深く、根強く愛される圧倒的な人気スターだったことが再確認できました。 また調べてみて気が付いたのは、「霧笛が俺を呼んでいる」や「北上夜曲」「東京ドドンパ娘」「いつでも夢を」など当時のヒット曲の多くが映画化されて、さらに大衆娯楽として親しまれていたことでした。 次回は後半、63年〜65年をご紹介したいと思います。 |
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