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お久しぶりです。ハイファイ堂 日本橋店の永井です。
だいぶ暖かくなってきましたが、朝夕は冷え込むため上着の選択に悩
む日々を送っております。
さて今回は、リマスターなどについてまたお話ししたいと思います。
先日あるオーディオファンの方から、「古いロックのCD音源のリマスターについてどう思う?」というご質問を受けました。例えばビートルズなどの古い音源が何度かリマスターされ、どんどん音が良くなっているという噂をきいてのお話です。さて、新しいリマスターは、やはり「良い」のでしょうか?
60年代に録音されたその音源は、当時はもちろんアナログレコードとして発売され、80年代にはいち早くCD化もされました。「ノイズが少なく、裏返さなくても良い。小さくて、曲飛ばしも楽。」と良いことづくめのイメージで発売されたCDですが、当初はリマスターの概念が普及しておらず、レコード用のマスターテープをそのままCDに落したものも多かったそうです。レコードはプレスしたときに「ハイ落ち/ロー上がり」するのでわざと「ハイ上がり/ロー落ち」にマスタリングしているのですが、それをそのままCDにしていたので「高域が硬く、低域が出ていない」音質になってしまっていたのです。
今となっては笑い話ですが、CD化する際のマスタリングという概念はその頃あまり浸透していませんでした。
では、最近はどうでしょうか。DSD(ダイレクトストリームデジタル/Direct Stream Digital) などで作成されたハイレゾ(ハイレゾリューション=高解像度)音源がネット経由で配信されるなど、デジタル録音の技術も進み、レンジや解像度は増し続けています。CDやSACDよりもサンプリングレートの高い、スタジオで作った音源ファイルが直接ダウンロード販売で買えるようになり、デジタル音源の音もここまで来たか、と感心する様な音源にもよく出会うようになりました。
さて、ここで最初の「古いロックのCD音源のリマスターについてどう思う?」のお話です。ハイレゾ音源が得意とするのは、生音のリアルさや、録音された空間の広さまでも感じられる様な細かいニュアンスが表現出来る解像度ですが、このレンジの広さや粒立ちの細かさがあるが故に実現出来ること…これが実はアナログ音源のよりリアルな再現です。いちばん最近のビートルズのリマスター盤を聴いてまず思ったのは、「あ、レコードみたい」という印象でした。
話によれば、リマスター時に、当時のイギリスでポピュラーだったビンテージのオーディオセットを組み、ファーストプレスのレコード盤を用意して、それを聴きながら近い音質を目指したということです。これはすなわち、レンジの幅や音圧といったデジタル音源としての特徴をことさら強調するのではなく、よりなめらかなアナログらしさを目指したマスタリングといえるのかもしれません。こういった流れから、よりレンジ感などを求める人からは「新しいマスタリングのほうが良い、とは必ずしも言えなくなった」という意見も出ているようです。
ということは…「このアルバムは2年前に出た20××年のマスタリングがいちばん良いなぁ」とか「◯◯さんがやった1つ前のマスタリングがたまらん」といったマスタリングの種類を選んで聴くリスナーも出てくるかもしれませんね(というか、おそらくもういらっしゃるのでしょう)。
みなさんも異なるプレス年代/マスタリングの同タイトルCDをお持ちならぜひ聴き比べてみてください。意外と昔のモノのほうがしっくり来る、という結果になるかもしれません。
最後にとても良かったリマスターのBOXセットを2つご紹介します。こういった再発リマスターセットを買うと、前に持っていたCDとダブったりすることがあると思いますが、そういう時こそ、その2枚の音の違いをを聴き比べてみましょう!
まずは「Joni Mitchell /the Studio Albums 1968-1979」。僕がいちばん思い入れのある時代のアルバムが10枚入ってます。値段もかなり安いので、何枚か個別にCDを持っている方にもオススメです。
(最近ついにJohnny Marrがソロアルバムを出したり来日が決まったりと、大ファンである僕は勝手にあたふたしておりますが、)こちらは我が青春のグループ、The SmithsのBOX! 2011年にこの「The Smiths / Complete Box Set」がでたときには狂喜しました。アルバムごとのサウンドアレンジが大きく異なり、新旧の曲を続けて聴いたりすると(それぞれの曲は大好きなのですが)その音質のばらつきが気になっていたグループなのですが、このJohnny Marr本人によるリマスターによってそういった違和感もかなり少なくなっています。彼らが当時作りたかった音質により近づいているのではないかと思います。ファンの方ならアルバム全部持っていらっしゃるでしょうが、ぜひ聴き比べてみてください。
ではまた!
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