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♪恋人は底抜けの顔で 街角で楽しんだものよ アイビー・ルックの二人づれ そこらのして歩いた ポップコーンほおばると今も たわいなく笑いたくなるの・・・・ 作詞:有馬三恵子 作曲:筒美京平による南沙織の名曲「想い出通り」が脳内をヘビーローテーションする。 弾けるような曲調に、哀愁をスパイスとして振りかけたイエイエな質感がたまらない。 できることならダニエル・ビダルかジェーン・バーキンにフランス語でカバーしてもらいたいと常々思うのである。 日本橋店 渡辺正で御座います。 今回のテーマは恋人たちが闊歩したアイビールックとその周辺の音楽について。 またまた悪評高い独り善がりの持論を無駄に書き連ねますが、 よろしければ暫しのお付き合いを・・・・ |
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“Take Ivy” ナンバー•ワン•サックスーツをご存知だろうか。 日本では1型(いちがた)と呼ばれる50〜60年代に大流行したアイビーファッションの代表的なスーツの呼び名だ。 ディテールはナチュラルショルダー、段返り、センターフックドベント。 本来の伝統的なスーツとはヨーロッパの貴族のためのもので手作業で身体にそって構築される。言わば鎧のようなイメージで肩幅が広く胸板を厚く見せる。 一方1型スーツは、アメリカで考案された寸胴なボックスシルエットが特徴の世界で最初の量産スーツだ。 肩をフィットさせるだけで、後は機械で量産し易くするために身体に沿わさず直線的なデザインとしている。 当時、革新的だった1型と呼ばれる寸胴スーツは伝統的スーツのようなグラマラスさやエレガントさは持ち合わせていないが、スーツを一部の特権階級者たちの古臭いものから、行動的な男のモダンで溌剌としたファッションに押し上げて、当時のアメリカン・ゴールデンエイジの心にぶっ刺さったことは容易に想像がつく。 そして、大学生を中心としたティーンエイジカルチャーが本格的に台頭し、この1型スーツを筆頭にスポーツウェアを組み合わせたキャンパスファッションが席巻していく。 その中でも特に、東部の8校作られたフットボール連盟をアイビー・リーグと呼び、彼らのスポーティーでバンカラなキャンパスファッションはアイビールックと呼ばれ世界中で大流行した。 ココシャネルがコルセットで女性を縛ることを拒否して現代的な女性ファッションの礎を築いたのと同じくらいに1型スーツは大都市で働く男の服飾を変えた革命的なものだと思っている。 |
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“Songs change with the times, the times change with songs.Part II” 歌は世につれ、世は歌につれ 言い尽くされた言葉ではあるけれど、歌は世相を反映するし、パワーのある歌に世相は引き込まれていく。 冒頭の南沙織の「想い出通り」が世に出たのが1975年。 当時は今の若者には考えられないくらいファッションに夢があったし、かけがえのないものだった。そんな時代の気分が流行歌の歌詞にも反映して南沙織は ♪アイビールックの二人連れ そこらのして歩いた と歌い当時の若者を多いに共感させた。 ファッションとともに音楽にもパワーがあり憧れの音楽家や流行歌手のファッションをみんな挙って真似をした。 すこし前までは音楽とファッションが密接に繋がり絡み合っていたから、音楽を聴くとファッションが見えるし、ファッションを見れば音楽が聴こえてきた。 それと比べて、最近の音楽からファッションは見えてこないし、ファッションから音楽も聴こえてこなくなったように思う。 音楽は音楽で服飾は服飾。 それで良いのだが、双方にパワーがあった頃は自然と見えてくるし聴こえてきたのではないかと思うのである。 |
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“Take jIvy” 日本でのアイビールックは60年代VANやJUNが伝搬し、みゆき族という社会現象となった。 ここで、北米のエリート学生のライフスタイルであるアイビールックとみゆき族のストリートファッションとは、似て非なるものを感じる人も多いと思う。 みゆき族のお手本はビバップ以降のモダンジャズのミュージシャンがやっていたエキストリームアイビーだからではないか、と言うのが僕の持論だ。 エキストリームアイビーはジャイビーアイビーとも呼ばれる。 スイング〜ビ・バップ時代の黒人ミュージシャンは白人を楽しませるお調子者の道化師で無ければいけなかった。道化のエンターテイナーはド派手なズートスーツやタキシードに蝶ネクタイで舞台に立つことを求められていた。 公民権運動が高まりを見せる中、ジャズはビ・バップからモダンジャズへと変化して行った。 それがどう言うことかと言うと、道化ではないプライドを持った黒人の意思を音楽で示すことであり、陽気でちょっとセンチなダンスミュージックよりも内証的でシリアスな心情を楽器で表すことだ。 ジャズも世につれ、世もジャズにつれた。 そうなるとステージ衣装も変わってくる。 奉公人のようなタキシードを脱ぎ捨て蝶ネクタイを外し、大都市で働く男に似合うナンバーワンサックスーツを選んだ。 ジャズマンは音楽と同じくらいに着るものにも気を使わなければクールと呼べなかった。 機械で量産し易くするために身体に沿わさず直線的なデザインとしたナンバーワンサックスーツのはずが、ジャズマンにかかるとヨーロッパの腕利きのテイラーの手によりハンドメイドで誂えられて、ピタッと身体に張り付くほど細身になり、ナチュラルショルダーは度を超えてドロップショルダーと呼ばれるナデ肩となった。 エキストリームアイビーとは、エリート白人のアイビールックをデフォルメしてしまうことで、エリート白人達を茶化すという、なんともジャズマンらしい知的な公民権運動なのだと思う。 |
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“モンキーダンス モンキーフェイス 平凡パンチ プレイボーイ” ジャイビーなエキストリームアイビーはリズムアンドブルースのミュージシャンや黒人に憧れる白人にも大流行する。 60年代になると、イギリスではモッズと呼ばれるリズムアンドブルースに心酔する若者達の着こなしのお手本となり、日本ではみゆき族が少ない情報を頼りにぴちぴちに詰めたVANのスーツで銀座にたむろしたり眉をしかめながらジャズ喫茶でモダンジャズを聴いていた。 残念ながら今の音楽を取り巻く環境や洋服には、当時ほどの熱気が感じられない。 アイビールックに身を包み、しかめっ面でジャズ喫茶のスピーカーと対峙しているのも、スーツ着込んでダンスシューズに履き替えて、クラブでビンテージなスカやリズムアンドブルースを踊っているのもおじさんたちではないか。 せめてウチはこの熱い音楽の火を絶やすまいと、毎日店頭でアンプに火を入れてシコシコと古くさいレコードを鳴らしているのです。 日本橋店 渡辺正 |
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