お久しぶりです。日本橋店の永井と申します。 いい感じで暖かくなってきました。しかし、油断すると朝夕の冷え込みがありますので、予備の上着はお忘れなく。 |
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さて今回は、「2019年に実現か!『HD Vinyl』とあれが結びついたらひょっとして…」と題してお話ししたいと思います。 何年か前から話題となっていた、最新の技術で音質/音圧/録音時間を向上させることができるというレコード「HD Vinyl」。 これは、2016年にオーストリアの新興企業Rebeat Digitalが欧州で特許を申請した「High Definition Vinyl」という新しい高品位のアナログレコード製造技術です。 ( https://hdvinyl.org/ ) 通常レコードを量産する場合、カッティングした後にラッカー盤→メタルマスター→メタルマザー→スタンパー製作という工程を経て、プレスされますが、 この新技術では、3D地図とレーザー加工のテクノロジーを駆使してパソコンの3Dモデリングでレコードの音溝のデータを細かく調整しながら生成→レーザー彫刻機でスタンパー(レコードの原盤)を作る、というシンプルな工程でOK。 今までのカッティングよりも情報損失が少なく正確に音声信号を記録できる、とのことです。 「HD Vinylは普通のレコードプレーヤーで再生可能で、従来の方法で作られたレコードよりも、30%音圧が高く、30%録音時間が長く、そして全体的により忠実な音の再生が可能なレコードが製造でき、また、スタンパーの摩耗を減少させ、生産時間を短縮することも可能になる」との解説もあり、もしこれが簡単に実現できるようになれば、かなり良い音のレコードが期待できると思います。 |
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ただ、少し気になるのは「アナログの溝を、デジタル技術で管理する」というところ。昔の「アナログテープ録音をレコードにプレスしたもの(録音/プレス/再生まで全てアナログで、デジタル技術を通っていないオールアナログで作られたもの)」と比べてどうなんだろう、という疑問が残ります…。皆さんはどうお感じでしょうか?もちろん、ただの考え過ぎで、実際に手にした時に「いやいや、杞憂だった、素晴らしい!」となってくれることを楽しみにしていますが…。 今までにプレスされてきた様々な重量盤・高音質盤との差も気になるところですね。 |
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そして、僕の想像はもう少し広がります。そう「もう少しで買えるかも」というところまできた、3Dプリンターとの組合わせです。おそらく、データの細かさ/製造の難しさ/材料の問題などがあって、今はまだまだ無理なのでしょうが、この「音溝のデジタルデータ」を買って、家の3Dプリンターでレコードを作る、という夢の世界がこの先実現するかもしれません! |
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PRO-JECT / RPM-9.1 http://www.hifido.co.jp/?code=18-15930-15652-00 ビンテージプレーヤーももちろんですが、やはり、新世代の凄い溝のレコードならこういったハイエンド系のレコードプレーヤーでも聴きたいですね。静かにゆったりと音が出る感じの、おススメプレーヤーです。 |
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思えば90年代前半までは、家にパソコン/スキャナー/プリンターが普通にある世界など想像もできませんでした。それが今やカラーコピーやスキャンも出来るプリンターが当たり前のように広まりました。好きな画像などを好きなだけ家でカラープリントできるなんて、その頃の自分からしたら信じられないことでしたが、下手したら今は家族一人に1台プリンターがあってもおかしくありません(そういえばCD-Rを家で焼く、というのも同じくですね)。この隔世の感から考えると「溝のデータから各自レコードをプレス」というのも、あながちおかしな話ではなくなるかも知れません…。自分の持っているレコードを3Dスキャンして複製も出来るようになるのか?とか考えると、すごいことですね。(※これだけPCでの宅録の環境が整っても、マスタリングにはプロの設備や技が必要なように、カッティングにも職人技が必要だと思います。おそらく家で良い盤をプレスというのはとても難しいでしょうが…。) |
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「ちょっと最近お金に余裕があったから、○○の新譜の溝データー、すごく良い材質のビニール買って、めっちゃ深溝でプレスしたわー。ええ音やー!あの、EMIの赤盤のシミュレーションビニールも今度買ってみよ。」とか「あの盤、傷いったからもう1枚焼こう」なんてことが当たり前になってほしいです(笑)。ここまでいったら「あのプレミア付きの名作LPのファーストプレス盤の溝データー、今月末まで特価30%オフセール!RVG刻印付き!」や「あの名匠、『小鐵徹のカッティング技プラグイン』ついに発売」なんてのも期待したいですね。 …と妄想は広がりましたが、まだまだ先の話だと思います。音の良い溝をお探しのときは、ぜひハイファイ堂 レコード店で良い盤を手に入れて下さい! (例えばこういった「LP洋楽」で検索したページを見ていると、 http://www.hifido.co.jp/KW/G5004/P/A10/J/0-50/S0/M0/ 「あ、これCDで持ってるけどLPでも聴きたい!」というような盤が、きっとたくさん出てきます。) |
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最後に、最近家で聴いていてあまりにも音が良いのでびっくりしたLPをご紹介します。 |
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発売当時のLPから初CD化の時の「曲カットCD」、再発リマスターCDなど、色々なソフトで何度も聴いてきた作品ですが、改めて手に入れた「初回ステッカー銀ジャケ」と呼ばれる昔のプレスのレコードを聴いて、新たな感動がまた…。 |
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それは、1980年発売の矢野顕子さんの名作「ごはんができたよ」のLPです。 ( https://ja.wikipedia.org/wiki/ごはんができたよ ) おまけでついていたラベルに貼るシールが貼らずに奇麗に残っていました。おそらく初盤なのでしょう。たまたま最近中古レコード店で良い状態のものを見つけて手に入れたのですが、盤の状態が新品と見違える程の奇麗さで、前オーナーの保存状態に感謝!という逸品。 いろいろな盤を聴いている途中で何気なくこれに針を落としたら、「何この音!!」としばし唖然。発売当時にもLPを持っていて何度も聴いたものですが、当時持っていたシステムは中の下ランクのシステムコンポでしたので、このレコードの音の凄さに気づきませんでした(今も別に特別良いものではありませんが…)。 ピアノ、歌声、そして何よりドラムの音が素晴らしいトーンで迫ってきます。 そして「ということは、」となめるようにクレジットを見ると、やはりカッティングエンジニアに小鐵徹さんの名前が。やっぱり!というか、なるほど!というか、久しぶりに、文字通り大きく膝を打った瞬間でした。 ではまた! |