ハイファイ堂メールマガジン

チェロのオーバーホールをしてみましたvol.2 試聴レポート大須本店　越濱　靖人

修理してから１ヶ月経ちました。結果的には１．格段にきめが細かくなった２．低域〜高域までの密度が増した・粘りと艶が出てきた３．これによってちょっとボリュームが大きくなったような気がする４．抜けが悪くなった５．素朴っぽい質感からハイファイな質感になってしまったといったところです。

１．スーパートリオ／チックコリア・スティーブガット・クリスチャンマクブライドオーバーホール前から比べると静寂感が増し，静かな空間からチックコリアのピアノがフッと入ってくる感じ。ピアノの質感がとてもシルキーで雰囲気が増した。ただ少々太く成りすぎた感があり，鍵盤のタッチがややぼけて聞こえる・・ガットのドラムは迫力が増し制動も効いている。シンバルのサウンドも芯が分厚くなったようでこれはOK。マクブライドの軽やかで早いベースも細かなところまで分かるようになりGOOD。小切れ身がよい知的なベーシストといった感じ。全体的には少し音がかぶり気味になった印象なので，できればもうちょっと乾いてほしい・・とプリに願うところ。
２．バッハ・平均律クラヴィーア曲集／グレン・グールド（初回限定・銀蒸着プレス版）この録音は１９６２〜１９７８年と，かれこれ３０年になります。以前のパレットプリは「もめん豆腐」のような素朴な感じだったので，このような古いソースがとても良く合っていました。今回オーバーホールを済んで「たまご豆腐」のようなつるっとした質感になったので，このグールドは合わないかな，と思っていたところ悪くありませんでした。グールドのピアノがより密度を増し，力強さが出てきた様です。グールドの得意とする弱音はさらにしっかり聞き取れるようになった利点とグールド自身の鼻歌がよーく分かるようになってしまった（笑）点が印象的でした。全体的には中低域までしっかり音が出てきた為，猫背のグールドが若干しゃきっとした姿勢で弾いたような感じになりました。
３．モーツァルト・バイオリンコンチェルト曲集／アンネ＝ゾフィー・ムター＆ロンドンフィルハーモニー管弦楽団（２００５年７月録音）１曲目，第１声のバイオリンの華やかで濃い弦の音がとてもびっくりしました。以前はちょっときつめの荒い音だったのですが，オーバーホールしてから濃厚で艶っぽい「熟成ムター」サウンドが印象的です。全体的なハーモニーもすばらしく，まさしくピラミッドバランス。裾の方までしっかりと出てきました。しかもどこまでも続くような余韻にしばし翻弄されてしまいました。このCDを聞くと，以前のパレットは劣化していたのだと強く感じさせられました。クラシックの弦はこのくらい濃厚で艶がないと楽しめません。低音の引き具合も良かったです。しかしながらレビンソンサウンドの特徴であるからっとした感じ，低域が残らない部分などはオーバーホール後無くなってしまいました。身が詰まりすぎというのか，音が残ってしまう為次の音とかぶっているようです。

以上のように，良い点・悪い点があります。私としてはもう一度調整に出したいと考えています。修理をお願いした技術者にフィードバックし，出来る限りチェロサウンドを追求していきます。皆さんもご感想などありましたら是非参考にしたいと思いますので，メールでお寄せください。 hifido@hifido.co.jp　越濱宛てでお願いします。

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