ハイファイ堂メールマガジン

ALTEC TYPE 605Aスピーカー初入荷！大須本店　越濱　靖人

今回はアルテックの珍しいスピーカーが入荷しましたので紹介したいと思います。私も永らくハイファイ堂やって来ましたが、初めてこんな型番の物があったのだと知りました。アルテックのキャビネット「TYPE 605」です。

背面からも見て分かる通り米松のエンクロージャーで、造りはなかなか良いです。バサバサの米松合板ではなく、もう少し密度のある合板だと思います。適度に響き、適度に締まるといった印象でしょうか。非常に綺麗なレストアがされていました。外観は抜群です。



当時のカタログにTYPE605とTYPE606があります。年式は1949年〜1952年頃と推測されます。当時家庭用に発売された2種類のエンクロージャーはユニット1発もの用のエンクロージャーだった様です。TYPE605は真四角の通常置きタイプ、TYPE606はコーナータイプです。その中でもAシリーズは604、602型38cm同軸2ウェイ用、Bシリーズは30cm同軸2ウェイ用です。今回入荷したタイプは604Cユニットが付いていましたので38cm用ということでTYPE 605Aとなります。※上記カタログ写真はwww.hifilit.comから拝借しました。

フロントの金縁があり得ないほどの綺麗さで輝いています。所々にある花模様のバッチが印象的です。どちらにしてもA5やA7といった業務用とはかけ離れた美しさで、アルテックのイメージが格段に変わりました。実に細かい仕事ぶりです。

エンクロージャー内部、ユニットの状態です。吸音材はおそらく張り替えられていると思いますが丁寧に変わっています。コーン紙もクラックの無い美品です。ですが、音のテスト信号チェックでどうしても中高域の音圧が左右合いません。そこで当社のサービスでチェックしたところ・・・



やはり不良が有りました。通常はユニットを疑いますが、今回はスイープ信号でも歪みが無く違和感が無かったため、別に問題があると判断しました。今回はネットワーク不良だった様です。片チャンネルの中高域が通常より大きな音が出ていた様です。これでは真ん中に定位しない訳です。これで中も外もバッチリになりました。

中のコンデンサーはデイトン製で交換しました。このコンデンサーはアメリカ製品と相性が良く、ヌケが良く明るい音が特徴です。ハイファイ堂ではJBL製品にもこのデイトン製を採用しています。正直なところオリジナルを尊重しパーツを変えないのが筋かもしれませんが、やはりちゃんとした音が出てないのではオリジナルの意味がありません。きちんと測定し出来るだけ元の状態に戻す、これがハイファイ堂メンテナンスの基本的な考え方です。今回の605Aスピーカーは大変落ち着いた音質で、中域・高域が目立ちがちなアルテックと違い、低域とのバランスがとれた素晴らしい音でした。私の印象では604C同軸ユニットは中高域が強い記憶があるのですが、今回はエンクロージャーとのマッチングが良いのか絶妙なバランスで全くキツさを感じませんでした。乾いた質感、ふくよかな中低域、落ち着いた重み・深みをじっくりと味わえるビンテージスピーカーでした。