ハイファイ堂メールマガジン

実は最近…、といってももうかれこれ半年以上前からですが外装メンテナンスという新たな仕事を授かりました、大須本店、改め大須商品部の小島です。作業場は大須2F、現在は閉鎖しているスペースで鋭意作業中です。ということで今更ですが、今どんなメンテナンスをやっているのか、現在作業中の光景とともに少し紹介したいと思います。
作業内容的に一番大掛かりなのがこのグラインダーによるエンクロージャーの塗装剥ぎです。いま剥いでいるスピーカーはC50オリンパスS8の天板部分ですが、これほどに面積の大きな部分を剥ぐにはグラインダー抜きには困難です。この剥ぎ作業ですができるだけ色を剥いで色の入ってない白木に近い所まで削ってく訳ですが、スピーカーの種類やメーカーによって色の入り具合が違うため剥ぐ時間に大きく違いが出ます。
	個人的に特に大変なのがALTEC 620系で単純なスクエア形のスピーカーですが色の入りが非常に深く、白木に近い所までもっていくのに2本で3時間近くかかります。620に限らずしっかり色を落としておかないと後の着色で綺麗に仕上がりません。だからといって剥ぎ過ぎると突き板の層を通り越して地に達してしまうのでその辺りの加減も行わなければいけません。
エンクロージャー等の褪色部等に塗るタッチアップ補修。単純に色味の合う色で塗るのではなくどちらかというと周囲の色と馴染ませるように浸透させるやり方をとります。写真はALTEC 612Cのスリットの断面部ですがこういった所は表面が水分を吸いやすい部分になっているので塗料は少なくして水分を多く入れて塗っては乾かし、塗っては乾かしを繰り返します。この方法のほうがごくごく自然に仕上がります。
	色味の調整についてもう１つ、コーン紙の着色作業について。写真はJBL L88NOVAに組み付けられているウーファー、123A-1のコーン部分ですがこの色味も非常に微妙な色の調整が必要です。この色、ただの白ではありません。
「ただの白」と「コーン紙の白」の色の違いはこの通り。ちょっと分かりにくいかもしれませんがただの白で塗ってしまうと白みの照明が強い場所に持って行くと白みが増して青白く見えてしまいます。そして何より、スピーカーに温もりが感じられません。なのでここで使っている白はオフホワイト寄りの白に若干の黄土色、分かりやすく言うとタバコ色を入れて調整しています。このさじ加減もなかなか難しく、「温かみのある白さ」をイメージしながら調整してます。そしてこれもALTECのタッチアップの作業と同様に塗料をべったり塗るのではなく希薄したものを塗っては乾かし、塗っては乾かしの繰り返し作業です。
	サランネット貼り替え。エンクロージャー研磨の次に大掛かりな作業になるのがこれです。写真のネットはタンノイ・バークレーのものですがこのネット貼り替え作業も非常に骨の折れる作業です。
ネットの裏面。ご覧いただいて分かるとおり、細かいステープルがネットの上をまるでミシン縫いかのように非常に高密度に打ち込まれています。ユニット部分のネットでその数およそ180個以上、下の横長ネットとあわせて左右で約600本以上。バークレーサイズでこの数なのでこれがアーデンだったら…と想像したくもない数です。ネット剥がしだけで半日〜一日がかりの作業になるのは必至、根気のいる作業です。
	最後に大須商品部でほぼ毎日使っているメンテ道具を紹介。まずはオレンジオイルクリーナー。スピーカーに吹き付けた途端、油汚れが浮き上がって液状になって流れ出す程に強力なクリーナーです。大抵の汚れはこれで落ちます。臭いはオレンジなので柑橘系のフレーバーなものですがその臭いと汚れの落ちている様との対比が面白いです。勿論、ご家庭の掃除用にもお勧めできる一品。
アーマーオールに代表されるシリコン系艶だし保護剤。経年変化で白くなったゴム系のエッジを黒光らせたり、スピーカーキャビネットに塗れば適度に艶が出て高級感が出ます。経年による色味の褪色が起きているスピーカーに薄く塗ると結構効果があります。車用途だけでなく家の様々な家具等にも使える万能艶だし剤です。値段は手頃で効果抜群です。