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こんにちは、大須本店の佐々木二朗です。 私たちオーディオ業界の人間でさえ一口に良い音と言ってしまいがちですが、良い音という言葉は恐ろしく主観的な言葉で、千差万別、十人いれば十通りの良い音が存在する事は言うまでもありません。 |
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ストラディバリウスよりも現代のバイオリンのほうが「良い音」と軍配が上がるブラインドテストの結果が判明!というような見出しのニュースを今年も見ることができました。 http://gigazine.net/news/20170509-evaluate-new-old-italianiviolin/ 実際この手のニュースは昔から定期的に投稿される類いのものであります。 この種のニュースによってストラディバリウスの価値が下がる事はありませんが、人間が良い音と感じる、感覚の部分はいかにあやふやか、ということは言えるのかもしれません。 |
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私が入社したての頃、商品の説明文を考えあぐねていた所、先輩に「主観で書けば良いんだよ。」と教えられた事がありました。当時の自分は人間の感覚的な部分をあまり信用しておりませんでしたし、そもそも、どこの馬の骨かもわからないような私の主観など、誰の参考になるのだろうかと、先輩のアドバイスを素直に受け取れず、客観的なデータ、例えば仕様や色、形、その商品の歴史的な記述などなるべく客観的な記述を心がけた物です。 |
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しかしあれから約10年が経った今では先輩が言ったことも間違っていなかったと思えるようになってきました。というのも我々が扱うオーディオの殆どは家庭用のものです。誰かに聴かせる為にあるわけではなく、自分自身が聴く為のオーディオです。その超個人的な音の世界においては、ヘタな客観的事実よりもむしろ、主観を述べた方が、お互いに通じ合うことができることもあるのではないかと思うのです。 |
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音を出す側とそれを受け取る側がお互いに存在することによって音楽はじめて存在できます。つまり受取側の存在も半分は占めている訳です。発せられている音の状態と同じぐらい聴き手の状態、つまり主観であり、心の中の問題も重要であります。 |
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そういう意味でいえば、ストラディバリウスのブラインドテストなどは聴き手の問題を無視しているので、正しい結果では無いと言わざるをえません。 |
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しかしながら、人の心の中には当然、魑魅魍魎が潜んでいます。時折みかけるオーディオグッズにありがちな、置くだけで音が良くなる魔法のオブジェ、の類いの存在も魑魅魍魎を退治する為に存在すると思えば、なんら不思議な事ではありません。最近ではそのような現象を、プラシーボ効果という科学的な名前が与えられている事も既に一般的になっていますよね。 |
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オーディオは主観でOK!、と同時にオーディオの開発者や技術者が持ち合わせている科学的な理論に裏づけられたオーディオ観は主観と同じぐらい重要な要素であり、時にチンケな主観など一蹴します。そこで、私の主観(=思い込み)による失敗談を恥を忍んでご紹介しようと思います。 |
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ある時ですが、正体不明のブックシェルフ型フルレンジスピーカー(12cm)を鳴らしていました。1980年代ぐらいの小型スピーカーで中高域の抜けが悪く、AMラジオのようなどこかの周波数が欠損しているかのような音色でした。 中高域のヌケが悪いので、高域不足かなぁと思案していた所、当社のサービスマンが通りかかったので相談してみると、小さな口径なのでおそらく高域は出ているんじゃないかと、アドバイスされました。欠けているのは低域ではないか、と。 そこでスーパーウーハーを足して鳴らしてみると、驚くことに中高域のヌケが良くなっていました。 |
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冷静になって元のスピーカーを聴けば明らかに低域不足。エッジの硬化に原因がある様でした。中高域のヌケの悪さに、高域が不足していると先入観を持って聴いていたのです。 この失敗によって、中高域のヌケの悪さには低域に何かしら原因ががあることを学びました。 |
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人気のスピーカースタンド TAOC/400DH 定価:96,000円 弊社過去販売価格:55,000円 制振性に優れ、低域の再現力が改善すると同時に中高域のヌケが良くなります。 ちなみに「主観」ですが、低域を改善すると中高域のヌケが良くなると同じように、スーパーツイーターで高域を足してやると、低域が締まり、再現力が増す傾向にあるように思います。オーディオにおける急がば回れ理論ですね(主観です!) |
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次の思い込みは、レコードとCDの違いです。 昨今、デジタルデータの音源は急速に進歩し、ハイレゾ音源も一般的になってきました。しかしハイレゾブームの一方でアナログの良さも再評価されて、一種のレコード再ブームとまで呼ばれた現象が起こりました。当然、弊社でもレコードの良さをお客様にお伝えし、積極的に営業してきました。 |
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私はお客様には、CDでは20khz以上の音はカットされていますが、レコードはカットされずに無限大に記録されています。なんせアナログですから!と説明していました。おそらくドヤ顔で。ところがです。あるとき国産の1990年代のとあるプリメインの仕様をみていたら、先程お客様にお話したことを根底から覆すことが書かれてました。レコードの入力は〜20khz(まで)と、、、。 |
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驚いて色んなアンプの仕様を見てみたのですが、1990年代ぐらいの国産のプリメインのレコード入力はほぼ、〜20khzでした。真空管が主だった1970年代ぐらいになると〜70khzとか存在していましたが、それでも〜20khzというのも少なからず見ることができました。これではレコードもCDも同じではないか、、、お客様には長年嘘をついてきてしまった、、、と恐ろしくなってきました。 |
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このままではイカンと、色んな人に意見を聞いてまわった所、またも弊社サービスマンから知らなかった事実を色々と教えてもらいました。 まず第一に、仕様書による周波数特性の記入の仕方ですがアナログとデジタルでは違いがあります。例えば20hz〜20khzと書かれていた場合、デジタルの場合は20hz以下、20khz以上の音は入力されませんし、出力もされません。ところがアナログの場合20hzから20Khzの間は正確に入出力されているということを「保証する」ということで、それ以上以下の音も入出力されているのです。あーよかった。 |
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安心したのもつかの間、サービスマンからまた別の事実を教えてもらいました。レコードの周波数特性は通常15khzが上限で、しかもデジタルのように15khz以上の音はだいたいスパッとカットされて記録されていない、というのです、、、これではCD以下じゃないですか、、、。 |
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それで色々調べてみた所、レコード針の周波数特性も〜15khzというものが多く存在しました。この事実にはどうもレコードの材質とカッティングの技術の性質上、15khz以上の音を記録するのが難しいことに由来している様です。それでは、レコードは15khz以下の音しか出ていないのか? |
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答えは否です。レコードの溝をレコード針が擦って再生する過程で、ノイズが発生しますが、そのノイズの一部が15khz以上の音として擬似的に再現されるようです。このような現象はノイズレスなデジタルデータでは起こりえないです。 |
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ちなみに確たる理論でありませんが、とあるメーカーのアンプでは上記のような理由も含め、アンプにある程度の残留ノイズを消し過ぎないように設計することによって、高い音楽性を保つようにしているという話がありましたが、本当の所はわかりませんでした。(主観です。) |
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OrtofonのSPUでさえ周波数特性は20khz以下ですが、DENONの定番カートリッジDL-103の周波数特性は20Hz〜45kHzです。この性能が15khzまでの記録がされているレコードでどのように発揮されるのか、というのも聴き所の一つではないでしょうか。そしてその専用機のような同社のフォノイコライザーAU-320の周波数特性は10Hz〜100kHzで、さすがDL-103の性能を十二分に発揮出来るように製造されています。 |
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DENON/DL-103 定価:35,000円 弊社過去販売価格:16,000円 |
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DENON/AU-320 定価:19,000円 弊社過去販売価格:30,000円 |
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そういえば、DENONは過去にPCMシリーズとして高音質レコードを発売していました。そして昨今のレコードブームでも高音質をうたうレコードが多く発売されています。ところが、これも主観ですが、どうも普通のレコードよりもチリチリノイズが発生しやすい気がしています。この現象と、レコードの上限が15khz以下に設定されていることと何か関係しているのかどうか、次回メルマガまでに調べてみようかと思います。 ※ちなみにストラディバリウスのニュースにはこんな続きもあります。是非こちらもご覧になってみてください。 http://gigazine.net/news/20140408-double-blind-violin-sound-test/ |
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