SPUの魅力ハイファイ堂メールマガジン第745号大須本店

SPUの魅力
ハイファイ堂メールマガジン第745号大須本店

5月に入り少し暖かくなりました。ドライブにはもってこいの季節です。休みの日には意味もなく遠出してしまいますね。こんにちは。大須本店の佐々木です。
最近お客様より質問がありました。「アナログプレーヤー始めてオルトフォンのSPUに興味があるんだけどどんな針なの？」ということで今回はSPUの魅力を紹介したいと思います。今までDL-103やM44Gは触っていたけどもSPUは触れてこなかったという方に少しでも参考にして貰えればと思います。

SPUとはデンマークのオルトフォンが出しているアナログカートリッジで、「Stereo Pick Up」の頭文字から付けられたそうです。最初期は1950年代に作られておりますが現代でも新製品が出ている非常に歴史の深いアナログカートリッジです。専用の箱が特徴的で知らない人からすれば指輪でも入っているのではないのか？と思うくらいです。

一目で一般的なシェル（画像はオルトフォンのSH-4BK）と違うのが分かると思います。基本的にSPUはシェルと針が一体型になっています。画像左のSPU（CLASSIC GE MK2）は自重31.5gに対して右側のM44GはSH-4BKがくっついていても16.8gと重量が倍近く差があります。この「重さ」もSPUの魅力の一つです。上記のSPUは所謂Gシェルタイプと言います。

Gシェルの他に上の画像のようなAシェルがあります。SPUはこのAシェルとGシェルの2タイプに大きく分かれます。こちらのAシェルはGシェルに比べ長さが短く専用のアーム（オルトフォンRMA309等）での使用となります。

通常のアームでAシェルを使用すると長さが足りずオーバーハングが適正に取れません。その場合は専用のアダプタ（APJ-1）が必要となります。これを使用することによりAシェルでも通常のアームで使えるようになります。

それでは実際に取り付けてみましょう。まず第一の関門は先ほどもお伝えしたように非常に重いです。SPUとバランスの取れるアーム、ウエイトが必要になります。一般的なショートアームではまずバランスすら取れません。SPUの為にオプションで重量ウエイトが販売されたりもしております。中にはウエイトに鉛テープを巻いて無理やりバランスをとってるという方もいました。そしてSPUはMCカートリッジです。トランスが内臓されているモデルもありますが、それ以外では昇圧トランスかヘッドアンプが必要となります。

現行商品のSPU #1EをVictorのQL-V1で視聴してみます。先ほどはSPUの重さが魅力と言いましたが本体自身が重いだけでなく針圧も4.0gと通常のカートリッジからすると考えられないほどかけます。針圧もM44Gで1.5g、DL-103で2.5g程ですのでこちらも倍近いですね。物理的に考えても倍もレコードに力を加えてるわけですからそれはもう音が深く濃く出ます。私はSPUを使用すると音の輪郭がより鮮明になると感じます。

SPU CLASSIC GE MK2と比較試聴もしてみました。#1Eと比べると低域の量感は若干#1Eの方があると感じるものの音の芯がしっかりしており、特に中域から高域にかけては艶もあり上質な音になっております。どちらもSPUらしく図太い音が聞いていて楽しいですね。他のカートリッジでは到底味わえない音です。
他にもモノラルのSPU等沢山ありますがどれも独特の深味があります。言葉で表現することは難しいですが、「音楽を綺麗に鳴らす針ではなく音楽の世界観まで感じることの出来る針」というと大袈裟かもしれませんがそれほど他の針とは違います。未だ一度も聞いたことがない方には是非聞いて欲しいです。60年以上の歴史を持つSPUの全てをお伝えすることは出来ませんが、少しでも聞いてみたいなと思って頂ければと思います。最後までご覧いただきありがとうございます。ハイファイ堂　大須本店　佐々木　将太