オーディオ製品のルーツを探るハイファイ堂メールマガジン第806号大須本店

オーディオ製品のルーツを探る
ハイファイ堂メールマガジン第806号大須本店

大須本店の佐々木二朗です。今回はオーディオ製品のルーツ（起源）について書きます。
ルーツと言うと「人類の起源はアフリカのアウストラロピテクス？」とかそういう類の話です。オーディオ界で有名な話で言うと、ALTECはもともとWestern Electric社の1部門が独立してできた会社で、JBLの創立社長はALTECの副社長でした。ですので、ALTECとJBLのルーツはWestern Electricなのです。
昨年、製造中止となったShureのレコード針ですが、M44GやV15シリーズ等数々のMM型の名機を残しており、MM型カートリッジといえばShure、と代名詞的存在と言っても過言ではなかった訳ですが、実はこのMM型のカートリッジにもルーツが存在します。それはドイツのELAC社です。
ELAC社は1950年代にMM型のカートリッジSTS-200を発明し、その後、220、222、240、320、322などなどを製造、発売していましたが、そのMM型の特許をShureが買収、その後ShureのM3DやV15 TYPE1など発売されるようになりました。ですのでアメリカのShure社のレコード針のルーツはドイツのELAC社にあると言えます。
そのELACの初期型カートリッジは大変個性的な形をしているので後続のSTS444、455、555とすぐ見分けがつきます。
ELAC/STS222　弊社中古売価：39,800円

(こちらはSTS555 弊社中古売価15,000円）
ずんぐりとしたフォルムから想像出来ない、輪郭のはっきりとした芯のある音がします。そのためか細かい音まで再生します。歴史的に最初期のカートリッジとは思えない完成度の高いサウンドで驚かされます。ちなみにShureのM3DやV15 TYPE1は対照的に図太いサウンドです。 STS初期型カートリッジは鮮やかな緑色のものが222で、他のものは赤、茶、グレー、黒など色違いで存在します。基本的な音色は同じで、数字が上がる程、特性がフラットになっているようです。針圧は3g以上必要で、見かけ通りカートリッジ自体の重さも一般的なものよりあります。ですのでortofonのSPUも使用できるようなしっかりとしたアームが必要になってきます。
例えばFR-64Sなどはこのカートリッジにベストマッチングだと思われます。 fidelity research/FR-64S 弊社中古売価：158,000円全長325mm　針圧印加範囲0〜5g　適合カートリッジ重量（シェル含む）17〜44g
そして実はこのFR(fidelity research)のアームも製造にあたって参考にされたと言われているものが存在します。それはEMPIREのトーンアームです。

EMPIRE/598 TYPE3 弊社中古売価：79,800円ベルトドライブ方式レコードプレーヤー　トーンアーム/ダイナミックバランス型　針圧可変範囲0〜4g シンプルでしっかりとしたデザインが言われてみると確かに良く似ています、特にダイヤルを回して針圧を加える機構はFRとEMPIREと同じです。


FRのアームは人気も高く価格も高騰していますが、EMPIREでしたらレコードプレーヤー本体もついて10万円以内で納めることも可能です。カートリッジをユニバーサルタイプではなく専用シェルに付けなければならないのが難点ですが、アームとベルトドライブの相性もよく、隠れた名機だと思っています。
（EMPIREのレコードプレーヤーは398、498、598、698と存在しますが、698は他のものとアームの形状が異なりますので注意が必要です。398はモーターのゴロ音を拾いやすく、498は販売期間が短く非常にレアな製品です。ですので製品の性能と購入のしやすさを考えると598がベストだとおすすめします。）
EMPIREのアームは990という型番になる様です。写真のものはおそらく498に付属していたものと思われます。アームだけの入荷はあまりないですが。。。
ルーツを巡ってオーディオの歴史的な変遷を知り、その時代に思いを馳せるのにはロマンがあると思います。皆様がお使いのオーディオにもルーツとなったものがきっと存在します。是非お調べになってみて下さい。