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ガラード301のこと 大須本店 越濱 靖人 |
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今週はガラード301について思うこと、いろいろな機構についてご紹介したいと思います。 |
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ガラードはイギリスのレコードプレーヤーです。ウィキペディアによると元々は宝石商だった様ですが、1945年にオーディオのガラードとして分社したそうです。道理でガラードのトレードマークは宝石のダイヤっぽい形をしているわけです。1954年に発売されたのが写真のガラード301型となります。(初期モデルはハンマートーングレーですが、今回の物は中〜後期の白モデルです) |
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トーンアームは概ね決まってオルトフォンアーム(写真左)かSMEアーム(写真右)が付いています。この組み合わせが多いのは理由があります(私の考えによるものです。参考程度にお願いします)。 ガラードで再生される音は、大変力強く生き生きとした魅力があります。他のターンテーブルを使用してもなかなかこの味わいを出せる物はありません。この特性を活かせるカートリッジは......と考えるとオルトフォンSPUになるわけです。求める音楽性が同じベクトルを向いていると思います。そうなるとトーンアームはSPUに合ったもの......オルトフォンアームが一番相性が良いということだと思います。ガラードの彫りの深いグイグイサウンドにSPUが深く濃く溝を弾く様を想像すると、右に出るものはないのではないかと思ってしまいます。 SMEアームも装着率の高いアームです。これは同じイギリス製であることが大きいと思います。その他SMEアームが持つ響きの良さ、豊かな音楽性がガラードを引き立てるからでしょう。濃く深いオルトフォンアームと対照的にSMEアームにしか出せない開放感や伸びのある弦の音色、ぬけの良さなども非常によく合います。またSMEの造形美もガラードと合わせると、より美しく心くすぐられます。 |
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次は内部について書いてみたいと思います。 |
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ガラードはアイドラードライブと言います。プラッター内側をゴムローラー(アイドラー)で回す機構になっています。モータースピンドル→アイドラー→プラッターという具合に動力が伝わっていきます。この方式は昔のものに多く、EMTやトーレンス、レコカットなど古いメーカーに多いです。アイドラードライブは機構上、無音時にゴロゴロとローラー音が出やすいです。ただダイレクトドライブやベルトドライブにはない生き生きとしたサウンドで未だにファンを魅了しています。 写真右のスピンドル部は3段になっています。アイドラーが当たっている一番下の細い段は33回転、2段目は45回転、一番上の大きな段は78回転となります。手前の回転切替レバーを動かすとアイドラーが上下し回転を切り替えます。尚、このスピンドルは60Hz用のものです。50Hzのスピンドルはもう少し径が大きいです。 |
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回転の調整機構です。スピンドルに付いたフライホイールを磁力の力で減速させています。この機構はエディ・カレント・ブレーキと呼ばれ非接触ながら負荷をかけることが可能です。写真右下にある磁気を帯びたアームがフライホイールの間をわずかな隙間で挟むことにより回転が落ちます。通常はやや速いスピードで回っているモーターを調整つまみで回転を落とし、丁度良いスピードを得ています。写真左は一番フリーの状態で一番速い状態です。写真右はMAXブレーキをかけた状態で一番遅い状態になります。回転させた時にカラカラいう場合はこのディスクが擦っている、または変形していることがありますので調整が必要です。 |
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裏面の写真です。特別な電子回路もなく基本的にON/OFFだけの機構です。ほぼレバーやカムを使った原始的な造りです。故に故障が少なく60年経った今でも動き続けています。 |
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輸送ロックについて ガラードは動作時、モーターがバネでフローティングしています。つまりふわふわした状態で回っています。モーターの振動がターンテーブルに伝わってしまうと「ムー」「モー」と言う音がスピーカーから出てしまいます。そこで動作時は輸送ロックを外し、フローティングすることでフレームに振動が伝わり難くしています。 逆に輸送時はモーターを固定します。奥の方に赤いネジが2本あります(写真左)これを締めていくとモーター底面にあるプレートが締め上がりモーターを固定するように出来ています。使う時は必ず解除して頂くようお願いします。 |
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ブレーキ、スイッチ、スピンドル部について |
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ブレーキは原始的にプラッター内側をフェルトが擦って回転を止めます。電源スイッチレバーをOFFにすると、ブレーキレバーがニョキッと出てプラッター内側を擦ります。逆に電源レバーONにすると、ブレーキレバーは元の位置に戻り擦らなくなります。尚、ブレーキの具合を調整するには、レバー根元についたマイナスネジを緩めます。この角度を調節することでブレーキの加圧具合を変えるという仕組みになっています。 |
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スイッチは至ってシンプルです。写真左のように金属ローラーが挟まってない状態でOFF、ローラーが上がり挟まった状態で電気が導通しON(写真右)になります。簡単そうですが実は意外と厄介です。左右に着いた羽根の金属の曲げ具合により接触したりしなかったりします。この羽根の角度は絶妙で、上手くいく角度が決まっています。クリーニングだからと言って安易に手を出さない方が良いでしょう。 |
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最後にスピンドル部です。今回の中〜後期モデルはオイル注入型になります。根元のネジを緩めることでオイルを注入出来ます。興味本位で拡大撮影してみましたが、これといって変わったことはありませんでした。軸は太く狂いが少なそうです。わずかにテーパーがかかっており、ターンテーブルが狂いなくしっかりハマるように加工されています。 前期型(ハンマートーン仕様)はグリス注入タイプが多く、軸受の形状も全く異なります。グリスタイプの方が音が良い!と言うことでマニアには高値で取引されているようです。ただ温度変化によって硬度が変わりやすく回転が安定しづらい(冬は硬化し夏は柔らかくなる)欠点もあります。いつもお願いしている修理屋はオイルタイプを推奨していると言っていました。 |
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久々に301を触ってみましたが、やっぱり期待以上の音質でした。思ったよりキレが良く、思ったよりパンチがある。線は太いけどキリッと締まっている。ノリの良さも最高です。この裏切らないところがガラードの良さですね。年々高くなってますが機会があれば是非お試し頂きたいと思います。 |
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