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「オーディオ風味 名曲アラカルト」 2006-5-12 音迷人 19.オペラ?:ジョルジュ・ビゼー/カルメン カルメンさん!今はプリザーブドフラワーと言って数年間色褪せないバラがあるんですよ。 |
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ビゼー(1838〜1875)はフランス生まれの短命な作曲家です。判で押したように音楽環境は整っており、父は声楽を教えており、母はピアニストでした。幼いときから才能を発揮し10歳前に入学しています。ただの尋常小学校ではないですよ!かの有名なパリ音楽院にですぞ。フランス生まれのモーツアルトみたいな子でしょうか。ピアノなど直ぐ記憶して弾いたと言います。ピアノの腕は大したもので、青年期にリストの新作を完璧に弾き、リストに絶賛されたそうです。しかしビゼーはオペラを作曲したいと考えていて、まもなく25歳で「真珠採り」を発表し、以後オペラや劇付帯音楽で実績を上げるのでした。代表作は「アルルの女」付帯音楽とオペラ「カルメン」、それに交響曲1番でしょうか。 |
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今回は「カルメン」を取り上げましょう。「カルメン」は比較的親しみやすいストーリーに加え音楽も耳に馴染みやすく、シーンごとに有名なアリアや重唱があって、誰でも直ぐ馴染めそうです。しかしその地位を得るには大変だったようです。まず作曲の経緯は「アルルの女」が好評で人気が出てきたビゼーさんにパリ・オペラ・コミーク座から新作オペラの注文が入ったのです。メリメの小説をベースに作られた脚本で「カルメン」を提案したが、少々柄が悪いのと殺人場面で終わるので、楽しく明るい演目を目指しているコミーク座としては難色を示したそうです。そこで策を弄して純情可憐な娘(ホセのいいなずけ)ミカエラや故郷の母への想い等を創造して印象を和らげたと言われています。(私はこの策に完全にやられました。この関係の部分の音楽が好きなんです)それでも初演では今様PTAのお叱りか受け入れられず失敗で、その3ヵ月後失意のうちに亡くなりました。(これは一説で、死ぬまでの3ヶ月間に数十回公演があって人気うなぎのぼりで喜んだとも言われています) |
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私が持っているCD(写真上)は近くの中古レコード店で入手したのですが、聴いてびっくり、お喋りが多いのです。うわーどうしたんだこれは!といぶかりました。それは私が過去TVや放送で聴いて来た「カルメン」は原作と違っていたのです。調べますと原作は当時のオペラ・コミーク式?で対話部を普通の会話のようにしてあったのです。しかし元を取りたいコミーク座は台詞を喋りからレチタティーヴォ:朗唱とか叙唱(歌っぽい台詞回し)に変えたり短くしたり、そしてバレエを入れたりして、所謂「グランド・オペラ」に仕立て人気を博したそうです。(これが初演4ヵ月後と言うのですから恐ろしい。ビゼーさん成仏できたかな?)現在の公演もこのスタイルが多いそうですが、上記の改版が原曲の良さを削いでるとの見方もあり、オリジナル版の演奏も増えているそうです。と言うことでお喋りの多い私のCDは「オリジナル版」と解りました。それとヴェルディ、モーツアルトなどのオペラに対して、フランス語で上演されるオペラの代表ですね。 |
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ストーリーは有名ですから省略しますが、要は優柔不断男、竜騎兵ホセ伍長と正反対の気性の激しいイケメン好み?の勝手気ままなイヤ「自由奔放な」(こう言わないと怒られる)女性、カルメンの不幸なお話です。(それに比べミカエラはいいなー!) |
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ではこのCDを使って、オペラのイメージとオーディオチェックを進めましょう。 ★前奏曲:闘牛士の入場行進曲と歌を軸に悲劇的運命を暗示する宿命のテーマなどを織り込んで展開する、オーディオチェック向き前奏曲です。フルオーケストラで打楽器総動員です。シンバルの汚れが有ってはいけません。トライアングルが突き抜けて聴こえます。闘牛士の歌はあくまでも明るく聴こえます。おどろおどろした雰囲気、旋律の宿命のテーマが金管を中心に悲鳴をあげるように奏され、短いフルオケ和音で終わります。激しい音が多いですが決してトゲトゲしくない音であれば合格でしょう。 |
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◆★第一幕:セビリアの街の広場で衛兵の詰め所、タバコ工場の前、町の人々が所在なげに「退屈でしょうがない」と合唱します。フランス語なので歌の力の入れ方流し方がイタリアオペラとかなり違うようで初め戸惑います。ミカエラが登場ホセを探します。衛兵交代後と教わりいったん去ります。★竜騎兵到着の合図のラッパに続き児童合唱で「兵隊さんは良いな!」と歌います。これ以前勉強した「バンダ演奏」の例です。児童合唱のため、多少ずれたり一人飛び出したりとニュアンスがあるのが聴けます。この曲は大変楽しい曲ですよ。トライアングルが活躍します。この間隊長とホセが「ミカエラが訪ねて来たぞ、ホセ!上手いことやってるじゃないか!」みたいな調子で話しっぱなしです。★工場の鐘が鳴って昼休み。出てくる女工をお目当てに街の男たちが集って来るて、カルメン登場でどっと沸く。(男どもは進歩してないですな)★目ざとく初心なホセを見つけたカルメンは「恋はハバネラ、私に好かれたらご用心」と暗示のように歌い赤い薔薇の花を投げる。肉感のある声を堪能してください。タンバリンが効果的に使われています。★カルメンが工場に戻ると同時にミカエラが戻ってきて、ホセに故郷のお母さんの話や、手紙を渡す二重唱「母の姿が目に浮かぶ」が歌われます。この二重唱は「人類の財産」と言いたいぐらい素敵ですよ。是非覚えて口ずさんで下さい。ミカエラの純情可憐な「性質」を現すソプラノの「声質」(ああ!急がしや)が出ていますか?オケが切々と合わせますが、すべて優しく柔らかい音です。テノールのホセの声の響かせ具合がいろいろ変えられて高まる感情を細かく表わしているのを確認してください。 あたかも写真の様な絵は初演カルメン役のガリ・マリエさん |
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★ホセがミカエラと結婚を決したその時工場で喧嘩が起こりホセがカルメンを喧嘩の張本人として捕まえてくるが見張っている間に「セギディリァ」で誘惑され縄を緩めてしまう。この歌も大変有名で演技派に重要なピースです。声の隅々ホセがメロメロになりミカエラを忘れるほど妖艶ですが濁りがありません。突然ティンパニロールから人ごみに高笑いを残して逃げ込む場面の短いフルオケはダイナミックです。歪まないか確認してください。 ★間奏曲:「アルカラの竜騎兵」短い曲ですが小太鼓とファゴット、フルートなど木管が楽しめます。 |
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◆★第2幕:逃亡2ヶ月後のカルメンは城壁の側の酒場に逃げ込み、「ジプシーの歌」を歌ったり踊ったり。速いテンポのピチカートで始まりフルートが主題を奏して展開し徐々に盛り上がります。歌は明確に聴かれトタイアングル、タンバリン、カスタネットなどが激しく打ち鳴らされます。歌も早口言葉の様子を呈してきて、踊り(フラメンコ)で床を踏み鳴らし終わります。と言うことでいろいろな音が聴こえます。打楽器が分離して聴こえますか? 隊長が来ていてカルメンを誘うが断られたので、お前を逃がしたホセが釈放されたと伝える。★暫くしてスター闘牛士エスカミーリョが登場し、お馴染み「闘牛士の歌:皆に乾杯」が歌われます。トライアングルが強打、金管がリズムを刻みます。これらは歌や合唱と混濁しません。闘牛士はカルメンを見初めメルアドを聞き出します。ああホセにとっては不幸な出会いです。★この後ジプシーの少しコミックでロッシーニしている五重唱「仕事(密輸)があるんだ」で5人が判別できますか?仕事(密輸)に誘われたカルメンは恋をしているからダメとホセのことを匂わせ皆にからかわれます。「こんな所に奴が来るわけないさ」と・・そこへ ホセが「アルカラの竜騎兵」を歌いながら捜し当てて来たので、★カルメンは喜び「あんたの為に踊るわ!」と迎える。切れの良いカスタネットの伴奏で歌われる歌はスペイン情緒たっぷりである。対峙する様に「歌の背景に」バンダで帰営ラッパが聴こえてきたので、ホセが「帰る」と言います。お互いの気持ち、現実を表わす実に憎い演出の音楽です。カスタネットの乾いた硬い音が聴かれます。この場面から恋の行方は急激に方向を変えます。 |
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当然恋に憧れているカルメンは怒ります。★気持ちの解らないホセは懐から萎れた赤い薔薇を取り出して、オーボエの独白から入る「花の歌:お前の投げたこの花は」と捨てずに君を想っていたと訴えます。カルメンは「折角逢えたのに帰るなんて!愛してくれてない!」とわめき、「好き」と言うならば密輸団に入って私について来てとそそのかします。そこにカルメンに気のある隊長が現れホセと決闘になるが分の悪いホセはジプシーに助けられ、仕方なく仲間に入ります。 帰ろうとした、恋に優柔不断なホセは足元を見られてしまい嫌われるという、ホセとカルメンの心理的に決定的な逆転の場面です。この辺が第2幕のクライマックスでしょうか。「花の歌」はテノールのリサイタルピースでもあり、大変よく歌われます。ゆっくりとしかし情熱的にカルメンに迫ります。テノールが高声のとき決して硬く突っ張らないことです。弦楽が実に素晴らしい個性的な柔らかい響きでつけてきます。何度聴いても飽きません。これでも心鎮めないカルメンは恐ろしいですね。実はついさっき遇った闘牛士に心が揺れて、ホセのチョンボに乗じたと見ました。(音迷人は女性不信者ではありません!) 写真のホセの右手に注目!あまり枯れたようには見えない。演出ミスです。 |
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★間奏曲:ハープの分散和音に導かれたフルートをフューチャー、各弦の斉奏に次がれるのどかな曲ですが、そもそも「アルルの女」の為に作ったそうです。濁りの無い綺麗なオーケストラトーンです。作曲家は劇中は物語を進めるのに演技のテンポなどに音楽をあわせますのでフラストレーションが溜ります。序曲や間奏曲でタガを外すようですね。 ◆★第3幕:人里はなれた山の中に在る密輸入者たちの隠れ家、一仕事終えたジプシー仲間が隠れます。ホセを冷たくあしらうカルメンが、仲間のカルタ占い「カルタの三重唱」で、何度も「死」と出るので、慄きながらも運命を悟ります。税官吏をまいたり、見張りに出て空になった隠れ家に、ホセを探して思いを取り戻そうとまた母の重病を伝えようと、ミカエラが案内人に連れられて現れます。★ミカエラの超有名なアリア「何も怖がることは無い」が歌われます。ソプラノが目一杯歌いますが、決して割れたり、硬くならないことです。歌に中低音の弦がゆるゆると歌に絡んでいるニュアンスが大変効果的です。言葉は解らずもミカエラのけなげな気持ちが伝わってくる名曲です。この後銃声が1発、迫力は出ますか。音を引きずらないという過渡特性の良さが必要です。俗に紙臭くない音という奴です。 一方ホセと遭遇した闘牛士エスカミーリョは決闘するが、危うい所をカルメンに助けられる。★ミカエラに見つけ出されたホセは母の危篤の報に、カルメンに後ろ髪引かれながらも山を下ります。特に後半では人物を表わすモティーフが沢山出てきてオペラ音楽の特徴を感じるでしょう。 ★間奏曲:やっときましたスペクタクル風場面転換音楽、「アラゴネーズ」打楽器がいろいろ鳴っている中オーボエがテーマを吹き展開させます。 |
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◆★第4幕:セビリアの街、闘牛場の前、ダフ屋の声、群集の合唱で、これからの壮絶なドラマの始まりを告げます。★混声合唱で「2カルトでどうだ」続いて「来た来た闘牛士たち」と陽気に盛り上げます。正に「グランド・オペラ」ですね。闘牛士たちが入場して行きますが、最後にスター闘牛士のエスカミーリョが登場。興奮は一気に盛り上がります。 ★ここで一寸 トレアドールと歌っています。闘牛士ってマタドールでしたよね。そこで調べました。 マタドール:止めをさす主役の闘牛士 トレアドール:騎馬闘牛士 ピカドール:馬に乗り、槍で牛を怒らす役 エスカミーリヨはマタドールではなかったのです。ビゼーは知ってたかな?ただ曲には「トレアドール」が一番ハマります。 |
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★辺りは闘牛一色、「ホセが来ているよ、気を付けな!」と言われていたカルメンの前に、荒れてやつれたホセが現れ、縁りを戻そうと情けなくも「捨てないでおくれカルメン!」と懇願します。カルメンはもう愛していないと応え、歓声の沸く場内に入ろうとし、すがるホセに「エスカミーリョこそわが命」と言い放ちながらホセからの指輪を投げ捨てます。(このシーンは結構昔からあったのですね。やってはダメですよ)最後のプッツンでホセは隠し持った短刀を・・・(オケの絶叫のの中ホセの泣き声が妙に通って聴こえます。と書きたかったのですがこの盤にはありませんでした) ああ!今回はオーディオ手ほどきならぬ、恋の手ほどきになってしまった。失敗!失敗! FINだが つづく |
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おまけ: ◆写真左:4,5年目のプリザーブドローズです。 写真右:これも毎回つづく偶然ですが、タイトル写真を作った翌日、何も知らずに「物凄く安いバラがあったのよ〜!」で我が家にやって来ました。カルメン色ばっかり!その後枯れた一輪が上のFINタイトル写真となりました。良い出来でしょう! ◆5/3のニュースで「NY,クリスティーズで絵画のオークションがあって、数ある絵の中で最高値は41億でゴッホの絵だった」と。その絵の名前は「アルルの女」!もう感嘆詞は書きません!! ◆それに読者の方から素晴らしい薔薇の写真が届いたとの噂も・・・ |
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◆前号などでご案内した辻本さんのリサイタルをレポートいたします。コンサートドレスがお似合いの美人で真摯に演奏されました。幅広いプログラムでしたが、最後まで集中されていました。 |
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初めのベルクは私のような素人にはわび、さびの部分が見えにくく(一般的には古典も、ロマンも、ポピュラーもそれと解り易い)摑まえがたいのですが、断片を良く整理されて出してくれました。ラベルはもう「道化師の朝の歌」につきますが、実に溌剌とした新鮮な響きで聴かせてくれました。 おしまいのシューマンの幻想曲はベートーヴェンの記念碑募金活動の為の作曲だそうで、ベートーヴェンの生涯を描いてるようですがシューマンの心像ともいろいろ重なっているようですね。実にピアノを大きく使った立派な建造物のような確りした構えになっていました。ラベルのピアニズムと相対峙する音楽を弾き分けていました。(音迷人推測:ラベルの後の休憩で調律師が入ったのは、修正ではなく響変更だったと思います。ピアノはスタインウエイ) |
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◆白寿ホールはHPでも見れますが、3年ほど前に出来たディザインの良い素晴らしいホールです。さらに良いのが音響で、音が痩せず豊潤な響きと言ってよいでしょう。やはり木を基調に造られているからでしょうか。舞台後ろの反射板でガラスかアクリルを不規則に捩じったような凹凸をつけた板が10枚見えます。珍しい乱反射板でアイデアですね。わが部屋で検討しようかな!家で聴いているピアノCDでは「梯 剛之ピアノリサイタル」がそっくりな響きでした。(結構やれる!) 白寿の健康具と関係あるらしくシートが良く、リクライニングシートコンサートと言う企画もあるようです。あとトイレが洒落ていました。(写真があるのですが・・・) ◆白寿ホールからの見晴らし。屋上の開放空間が素晴らしい展望台になるのでしょうが、雨で残念でした。7階のホール入口前フロアーからの新宿副都心の眺め。なぜかモニター用?にノーチラスSPがありました。数名の方が覗き込んだり反応されていましたので、ひょっとしたらこのメルマガ読者の方?が来てくれたのかな〜。 ◆追記:隣町の公民館でフルート&ハープのフライデーコンサートがありました。「アルルの女よりメヌエット」が聴けました。当然「F&Hのための協奏曲:2楽章」もありました。オケ部が無いのに不自然では無かったですよ。家で聴くそのまんま?の音でした。 |







