いつもお世話になっております。 ハイファイ堂、京都商品部の滝本です。 今夏、何回 口にした事でしょうか「暑い!」です。 暦(こよみ)も9月になったというのにまだまだ 暑いと言わなければならない日々が続きそうで、 今まで自分の中で築かれてきた一年の内における季節感 というものが、少し狂ってきているように感じます。 |
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さて、先日の事なのですが、スピーカーメンテナンス作業中に 季節感とはまた違う自分の中の「○○感」が悩まされる事がありました。 |
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京都商品部でのメンテナンスの工程として、 エンクロージャー、ユニット、ネットワークなど、 各部修理が完了したものを全て組み付けて、 最終、製品としてちゃんと音を鳴らしてくれるのかを チェックする作業がございます。 そしてその日は JBLのL101 Lancer を組み付けて、 その音チェック作業を行っておりました。 |
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JBL L101 Lancer は 1965年発売のフロア型、2ウェイ2スピーカーで、 天板の大理石とフロントグリルの格子が目を引く 古風な美しさを感じさせてくれるスピーカーです。 |
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構成は低域に(LE14A)、高域に(LE175DLH)、 ネットワークは(LX10)で組まれていて、 よく「ジャズレコードの音に合う」などと評されるように 艶を感じさせる音を聴かせてくれます。 弊社でも度々取り扱いさせて頂いている、 サイズ感もお手頃なモデルです。 |
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↑(左) LE14A (右)LE175DLH |
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LX10 → |
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そんなL101の音チェック、チェック用のCDを用いて 左右の音圧や、位相、周波数スイープなど進めていたのですが、 はて、何か音に違和感が・・・。 『音が妙に広がっている?』 チェック用の機器の配線や、チェック工程の都合上、 だいたい まずはCDに切り替える前にラジオからのオンエアの音が スピーカーから流れ、次にCDのステレオチャンネルチェック用のヴァイオリン曲、 サラサーテのツィゴイネルワイゼンが聞こえてくるのですが、 このL101のチェックではラジオとチャンネルチェックの音を聴いた段階で、 すでに何か違う(気がする)くらいの違和感を感じていました。 そして次のステップの位相チェックのトラックを鳴らすと、 途端にその違和感が際立ちました。 高音がどこか奥まった高い所にいるようです。 |
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ちなみにですが、 音チェック用のCDには現在こちらの 「デンオン・オーディオ・チェックCD」を使用させて頂いております。 いつも聴いているおかげで 普段の生活の中でツィゴイネルワイゼンや 愛の喜び(クライスラー/ラフマニノフ)を耳にすると 『サウンドチェックしなければっ』と反応してしまう体になってしまいました・・・。 |
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話を戻しまして、 さて、感じていた違和感の元は分かりましたが、 今度は別の問題で悩まされる事になりました。 これは 悲しいかな、自身の経験値の無さが所以の事なのですが、 この違和感を感じている状態がこのスピーカーならではの 特性なのかが判断しきれないのです。 (スピーカーとして明らかにおかしい音が鳴っているわけではない。 聞き方によっては音に広がりがあるようにも捉えられる。 これがそもそものL101の音なのだろうか・・・) と迷ってしまうのです。 まだまだ勉強中の身である私ですので、日々の作業に追われる中、 どのスピーカーがどんな音を鳴らすのかを学ぶのは 専ら自身がメンテナンスに関わったスピーカーの音チェック時が主となります。 そうして繰り返しスピーカーの音を聴いていると、 ある程度の「そのスピーカーらしさ」というものを覚えてきます。 |
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例えば、 「JBLならモデル個々の個性が色濃く出るようだけれど、 似通った音像の明るさを感じるな」とか、 「この音のやわらかい感じがTANNOYぽいな」とか、 「モニタースピーカーは、なるほど大きな特徴は感じなくとも この全てのレンジが平均的に鳴っている感じは安心するな」など 自分なりのJBL感、TANNOY感みたいなものが出来てきます。 |
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しかし、自分が休みの日であったり、別のメンテナンス作業中であったりすると、 貴重なその音体験の機会を逃してしまう事もあり、 そうするとまた次の機会までそのスピーカーの音の特徴を知らず終い、 となってしまうのです。 そして件のL101です。 最終チェック時の(L101の)音を聴いた事はあったのですが、 如何せん一年ほど前に一度きり。 全くもって自分の中の「L101感」が確立出来ておりません。 そうは言っても仕方がありません、まだあやふやなJBL感と そもそもが このL101の鳴り方が音として心地よいものなのかという 自分の中の音感みたいなものを頼りに判断してみる事にしました。 結果、やはり 否 でした。 ここでひとつご安心頂きたいのですが、 普段のメンテナンスではこういった状況になった時点ですぐに しっかりとしたJBL感、L101感を持った上司、先輩に的確なアドバイスを受け、 確実に商品メンテナンスを完了させております。 場合に応じて、私の勉強を踏まえて、ある程度まで任せて頂く事もあり、 今回は後者でありました。 |
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さて、こうなるとまずプラスマイナス極の接続間違いによる 位相違いを疑うところなのですが、 実は心当たりがありました。 ネットワーク LX10 の配線です。 |
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返す返すになりますが、まだ勉強中である私、 ユニットやネットワークなど各パーツのリード線の配線は (特に初見の物になると)前所有者様の物や、 パーツに配線してあるそのままを参考にする事もございます。 特にこのJBL LXシリーズのネットワークは上記写真のように +−が見た目だけでは分からない1〜4の数字表記になっておりますので、 手元に参考に出来る何かしらがあると ついつい手近なものからそれを利用していました。 今回は組み付け待機になっていたLX10に配線がしてありましたので そのまま組み付け参考にしたわけですが、 ただ、以前のLX10の配線の記憶と違った気もしていたので ここが真っ先に思い当たったのです。 早速、疑問に思っていたHF側の極を繋ぎなおしてみました。 そして再度音チェックをしなおしてみると・・・ 先ほどの違和感がきれいになくなりました! 上から下までの音がきちんと鳴って欲しい位置から聴こえてきて、 こうなってみると、さっきまでの音の広がりのように感じられた音も やはりどこか居心地が悪かった印象になってしまいました。 再度聴いた音は、高音・低音それぞれが乾いた印象の明確さを感じさせるのに、 その両音がきれいに位置を揃えてくると、全体の音の印象が 俄然、艶味を増して感じられるように聞こえました。 「なるほど、これがL101の音だったか」とあらためて 自分のL101感を上書きする事が出来ました。 |
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位相の違いだけでこれだけ音の受ける感じが変わる事を あらためて面白いと感じましたし、 反面、そういった音の違いも、思い込みや自信の無さから 判断出来なくなってしまう事の危うさも感じました。 そしてやはり、まずは基本に忠実である事が大事かな、とも。 今回、最終的に間違いのないようにJBLの取扱説明書で配線確認をしたのですが、 なら始めからそれを見ておけば、と誰かの声が聞こえてくるようです。 『急がば回れ』と上手に言った昔人はどこの誰だったでしょうか・・・。 |
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そんなわけでJBL取扱説明書・ネットワーク選択表から 一部抜粋で併記させて頂きます。 この辺りのJBLユニット、ネットワーク、ホーンは その組み合わせの基本を守る事で最適な音を鳴らせるようにと しっかりと体系化されています。 配線もしかりなのですが、ただここでまた頭を悩ませるのが 同じネットワーク名でも初期、中期、後期型などで 極の順が変わっているものがある事です。 そちらもあわせてご紹介出来れば良いのですが なかなか判別の難しいものでもありますので、 私自身の知識が追いつき、また今後あらためて ご紹介出来る機会があれば、と思います。 取りあえず今回は上の表と以下図で 本来意図されているであろうJBLサウンドを聴くために 皆様のご参考にもなれば。 |
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↓ LX10 |
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↓→ LX5 |
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猛暑続きで自分の中の季節感はズレていく一方ですが、 「JBL感」「L101感」などなどはズラすことなく しっかりと自分の中に作っていきたいと思う今夏でした。 それでは、また。 |