こんにちわ、京都商品部の朴 高史です。 まずは、わたくし事から、 今年の、私のオーディオミッションの一つ「レコードプレーヤーをダブルアームに」が完了しました。(めんどくさくて放っておいた、最も簡単なミッションです。) NEATの多分「GA-3」(一般には「オイルダンプ式」正式には、「Viscous Damped Transcription Tonearm」『粘性減退転写型トーンアーム』グレイタイプアームとも呼ばれるものです。)の内部配線と設置です。 シリコンオイルの充填に苦労しました(粘度が高く、小さな穴から注入するには、色々な工夫が必要です。) ビーチ・ボーイズの「ペットサウンド」がやっとまともな音で聴け、感動しております。(ミッションはまだまだあります。) |
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では本題です。 前回に続き、オーバーコーティングついてで、今回は、「オイルフィニッシュ」です。 ハイファイ堂に入社しまして、驚いたことの一つが、JBL等のスピーカーが、オイルフィニッシュで仕上げられていた事です。 家具、内装関係の仕事をしていた私にとっては、工業製品の仕上げにオイルフィニッシュが選ばれることが信じらなくて、強度の問題、自動化、機械化ができなく、効率化が困難な点などから、一点物の工芸品や、趣味のDIY向きの仕上げという認識でした。 |
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オイルフィニッシュのモデルで最も古いと思われるのが、JBL Model D 44000 C44 PARAGON 1957 |
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JBL 1957 catalog |
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ですが、発表時の1957年のカタログのエンクロージャーの仕上げには M マホガニー(ダーク)、ML マホガニー(ライト)、E エボニー(黒塗装)、WD ウォールナット(ダーク)、WL ウォールナット(ライト)、OL オーク(ライト)の6種の仕上げのバリエーションが用意され(以前の仕様が追行されたもののようです。)、注文により仕上げられていたようですが、オーバーコートは不明です。 1962年のカタログには、ダークマホガニー、タウニーウォーナット、オイルドウォールナット、エボニーの4種になり、1967年のカタログでは、タウニーウォーナット、オイルドウォールナットの2種の仕上げになってます。 メンテナンス時に見かけるのは、すべてオイルフィニッシュで、暗めの茶色のものがタウニーウォーナット、少し明るめのものがオイルドウォールナットかと推測されます。 日本に正規で輸入されだしたのが、1965年の山水電気によるものが最初ですので、それ以前のものは、ごく少ないようです。 ではなぜJBLは、オイルフィニッシュを採用したのか、色々と調べてみた結果、よく解りませんでしたので、以降は推論です。 |
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山水電気カタログ |
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まずは、オイルフィニッシュのオイルとは、亜麻仁油などの乾性油(時間とともに揮発する油)に樹脂と溶剤と乾燥促進剤などを混合したものです。 オリジナルオイルとして、職人が独自に混合を考え、使われたものと思われ、デンマークのチーク材の家具に使われたものが始まりとされます。 |
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FURNITURE-INCより http://furniture-inc.de/en/archive/73 |
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一般には、チーク材の仕上げ用とされる「チークオイル」やチーク材に限らず使われる「デニッシュオイル」などの混合オイルが市販されてます。 「デニッシュオイル」の代表的なものが、商品部でも使っている「ワトコオイル」です。 デンマークや、北欧家具が関係しているようです。 |
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商品部で使っている「WATCO」ワトコオイルです。 |
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アメリカの60年代は、ミッド・センチュリー・モダン全盛の時代です。 ミッド・センチュリー・モダンで我々がイメージするのが、チャールズ・アンド・レイ・イームズやジョージ・ネルソンなどのデザインなのですが、少し前にブームだったこれらのスタイルは、どちらかといえばオフィスなどのパブリックなインテリアスタイルで、家庭では少し雰囲気が違ったスカンジナビアン・モダン・スタイルが好まれていたようです。 アメリカのアンティーク家具サイトなどで紹介されているミッド・センチュリーデザインは大体スカンジナビアン・モダン・スタイルのキャビネットだったりします。 |
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Mid Century Furnitureより http://midcentury.dixonparks.com/ |
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当時のアメリカで、スカンジナビアン・モダン・スタイルが広まったのは、この人物の影響が大きいかと思われます。 フレデリック・ルニング(1881-1952) ニューヨーク、フィフス・アベニューで、ジョージ・ジェンセンの輸入代理店を営んでいたデンマーク系アメリカ人。 アメリカでは知名度が低かったスカンジナビアデザインを紹介、普及していった人物です。 1951年より、ルニング・プライズというスカンジナビアデザインを対象とした賞を設立し、アメリカ国内を始め、世界に向けてスカンジナビアデザインを広める役割を果たしました。 戦後復興期のアメリカでは、特に、シンプルで、機能的なデンマーク家具(デニッシュ・モダン)が人気を博し、ブームとなります。(70年代にはブームは廃るのですが。) オイルフィニッシュの家具も一般化していたと考えられます。 |
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PARAGONに続き、1960年に発表されたのが、 JBL Model C 50 Olympus です。 |
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デニッシュ・モダンに見られるシンプルかつ機能的なスタイルに、オイルフィニッシュの落ち着いた仕上りが嵌ります。 (当時のアメリカのリビングルームに自然と溶け込むように考えられたものかと思われます。) 様々な仕様が用意されていたPARAGONも、時代の潮流もあり、その個性的な外観には、落ち着いたオイルフィニッシュが主流となったと考えられます。 PARAGON、OlympusとJBLの試金石(PARAGON)とも言えるこれらのモデルに習い、下位モデルの C45 METOREGON, C51Apolloを始め以降のモデルにもオイルフィニッシュが多く見られる様になります。 JBLの企業としての成長期と60年代の時流が相まり、オイルフィニッシュをブランドイメージとして使い続けたと思われます。 |
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今回は、ほぼ私の推論になってしまいました。 では失礼します。 |